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先天性代謝異常症:誘導多能性幹細胞を使ったスミス・レムリ・オピッツ症候群のモデルは、この神経細胞のコレステロール合成障害によって起こるWnt/βカテニン機能不全が病因に関わっていることを明らかにしている

Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4067

スミス・レムリ・オピッツ症候群(SLOS)は、DHCR7に生じた変異によって7-デヒドロコレステロール(7DHC)からコレステロールへの還元が障害されることが原因の形態異常疾患である。SLOSは、認知機能障害、行動障害、神経系障害をもたらすが、影響の生じる細胞型、障害されるシグナル伝達経路はいずれも十分解明されていない。7DHCの蓄積もしくはコレステロールの欠乏のいずれが、主たる病因であるかも不明である。我々はSLOS患者由来の誘導多能性幹細胞(iPSC)を用いて、SLOS由来の神経前駆細胞内での細胞性異常を突き止め、これが神経細胞の時期尚早な運命指定につながることを明らかにした。また、SLOSに関連した異常に重要であるのはコレステロールの欠乏ではなく、7DHCの蓄積であることも分かった。さらに、Wnt/βカテニンシグナル伝達の低下がSLOS iPSCの分化異常の重要な開始要因であり、この低下は活性型Wnt受容体複合体形成の7DHCによる直接的阻害を介して起こることも突き止められた。カノニカルなWntシグナル伝達の活性化によって、SLOS iPSCで観察される神経細胞表現型が生じなくなるので、Wntシグナル伝達はSLOSの有望な治療標的となる可能性がある。

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