Review

微生物学:腸内微生物相から離れた器官への、生理的状態および病的状態におけるシグナル伝達

Nature Medicine 22, 10 doi: 10.1038/nm.4185

ヒト腸内の生態系は数兆個の細菌からなり、これらの細菌は食物中の多量栄養素を燃料として使って、生物活性を持つ化合物を産生するバイオリアクターを形成している。微生物相に由来するこうした代謝産物は体内の離れた器官にシグナルを送り、これによって腸内細菌は免疫系やホルモン系、あるいは脳(腸脳軸)、さらに宿主の代謝だけでなく他の機能とも連携することができる。微生物と宿主の間のこうした情報交換は、健康な宿主の生体機能を維持する上で必須である。しかし最近、腸内微生物相はさまざまな病気とも関連することが明らかになってきており、その範囲は肥満や炎症性疾患から、神経発達障害と関連した行動的異常あるいは生理的異常まで幅広い。本総説では、微生物相と宿主の間のクロストークおよび腸内マイクロバイオームから腸外部にある器官へのシグナル伝達について論じる。また、このような情報交換が宿主の生理にどのように関わっていると考えられるかを概観し、不適切に設定されたシグナル伝達が多様な疾患に関わる仕組みについても検討する。

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