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心疾患:腫瘍壊死因子αはケラチンのK8とK18の異所性発現を介して心臓保護作用をもたらす

Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3925

腫瘍壊死因子α(TNF-α)は主要なストレス誘導性炎症促進性サイトカインの1つであり、組織が損傷を受けた後の心臓で発現が増加し、その持続的発現は心不全発症の一因となることがある。TNF-αが心不全で細胞保護作用も示すかどうかは分かっていない。今回我々は、遺伝的心不全モデルのデスミン欠損マウスで、TNF-αが心臓保護作用を持つことの証拠を示す。TNF-αの心臓保護作用は、心筋細胞でNF-κBが介在して起こる2種類の上皮特異的中間径フィラメントタンパク質、ケラチン8(K8)とケラチン18(K18)の異所性発現の結果である。心筋細胞ではK8とK18(K8/K18)は主に介在板(ID)に局在する代替的な細胞骨格ネットワークを形成し、正常なID構造、ミトコンドリアの完全性および機能を維持することによって心臓保護作用をもたらす。心筋細胞でのK8/K18発現の異所的誘導は、別の遺伝的あるいは実験的心不全モデルでも生じた。K8/K18ネットワークが失われると、横行大動脈狭窄に続いて不適切な心臓表現型が生じた。ヒトの不全心筋ではTNF-α発現が増大していて、K8/K18はやはり異所的に発現されて主にIDに局在し、こうした心筋に含まれるデスミンの量は検出可能量以下だった。従って、TNF-αおよびNF-κBが介在する代替的なストレス誘導性中間径フィラメント細胞骨格の形成はマウス、そしておそらくはヒトでも心臓保護作用を持っている。

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