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がん:発がん物質や遺伝子操作によって誘発されたマウス皮膚扁平上皮細胞がんのゲノム全体像

Nature Medicine 21, 8 doi: 10.1038/nm.3878

がんのマウスモデルは、がんの生物学的性質の研究に日常的に用いられている。だが、マウスの発がんが、ヒトゲノムで見つかっている多数の変化と同じものによって引き起こされるのかどうかはまだ分かっていない。我々は、9,10-ジメチル-1,2-ベンズアントラセン(DMBA)によって引き起こされる皮膚がんの包括的なゲノム解析を行った。このがんは最も多く用いられる皮膚がんモデルで、良性の乳頭腫として出現し、扁平上皮細胞がん(SCC)へと進行する。また、G12D変異型Krasタンパク質(Kras G12D)を発現するが、p53は欠失している遺伝学的に誘導したSCCについても解析を行った。全エキソーム塩基配列解読を使って、DMBA誘発性SCCに特徴的な変異シグネチャーが明らかになった。DMBA誘導性SCCの大半ではHrasKrasRras2に頻発変異が見られ、これ以外の複数の発がん遺伝子候補および発がん抑制遺伝子候補にも変異が存在することが分かった。マウスとヒトのSCCでは、異なる器官に由来するSCCであっても、あるいは異なる発がん物質に曝露されたSCCであっても、同じ遺伝子に変異が頻発していた。侵襲性のSCCでは染色体異常がかなりの頻度で見つかり、特にDMBA誘導性SCCや遺伝学的に誘導したTrp53変異型SCCで著しかったが、乳頭腫ではこのような異常は見つからなかった。転移はがん細胞の連続的な拡散を介して起こり、さらなる遺伝学的事象が生じることは比較的少なかった。この研究は、マウスでの将来的な機能的がんゲノム研究の枠組みを与えるものである。

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