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代謝:クローン解析と遺伝子プロファイリングから明らかになった、ヒトの褐色および白色脂肪前駆細胞熱産生能の遺伝的バイオマーカー

Nature Medicine 21, 7 doi: 10.1038/nm.3881

褐色脂肪組織(BAT)の含有量や活性を標的とする操作は、エネルギー消費を増加させることにより、肥満やメタボリックシンドロームに対処する治療法となる可能性がある。しかし、個人に内在する差異と個人間の差異は共に、ヒトBATの不均一性の一因となっており、ヒト集団内での熱産生能のばらつきにも関わっている可能性がある。我々は、ヒトの頸部脂肪から褐色脂肪前駆細胞と白色脂肪前駆細胞のクローンを作製し、それらの脂質生成機能の分化と熱産生機能の分化の特徴を調べた。また、脱共役タンパク質1(UCP1)レポーターシステムと発現プロファイリングを組み合わせて使い、ヒト前脂肪細胞で新たな遺伝子シグネチャーセットを明らかにした。このセットによって、それらの細胞の成熟後の熱産生能を予測することができた。UCP1に対する正の調節因子であるPREX1EDNRBを、褐色脂肪前駆細胞でCRISPR-Cas9を使ってノックアウトすると、脂肪前駆細胞から分化した褐色脂肪細胞で見られるUCP1の高いレベルが顕著に低下した。また、細胞表面マーカーCD29を用いることで、高い熱産生能を持つ脂肪前駆細胞を前向きに同定・単離できた。これらの結果は、ヒト脂肪での細胞の不均一性に関する新たな知見をもたらすとともに、高い熱産生能を持つ脂肪前駆細胞を見つけ出すためのバイオマーカー候補を示している。

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