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がん:ヘパラナーゼは腫瘍浸潤とCAR導入Tリンパ球の抗がん活性を助長する

Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3833

キメラ抗原受容体(CAR)を導入したTリンパ球(CAR-T細胞)の養子移入は、固形腫瘍ではリンパ性悪性腫瘍の場合に比べて顕著な治療効果が得られにくい。腫瘍による活発な免疫抑制が、CAR-T細胞の有効性を制限している可能性もあるが、ex vivoで操作後のTリンパ球での機能変化も、リンパ系組織に比べて間質に富む固形腫瘍へ培養CAR-T細胞が侵入しにくいことの説明となるかもしれない。そこで我々は、in vitro培養したヒトCAR-T細胞の細胞外マトリクス(ECM)構成成分分解能について調べた。単離直後のTリンパ球とは対照的に、in vitro培養したTリンパ球ではヘパラナーゼ(HPSE)の発現が見られないことが分かった。へパラナ-ゼは、ECMの主要成分であるヘパラン硫酸プロテオグリカンを分解する酵素である。in vitroで増殖させたT細胞では、HPSE mRNAの発現が低下していて、これはp53(正式名はTP53;tumor protein 53をコードする)がHPSE遺伝子に結合した結果かもしれない。我々は次いでCAR-T細胞をHPSEを発現するように改変すると、ECM分解能が改善されることを明らかにした。この操作によって腫瘍T細胞の浸潤や抗がん活性が増強された。この手法を用いれば、間質に富む固形腫瘍の患者でCAR-T細胞の作用を増強できる可能性がある。

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