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糖尿病:メトホルミンはラットで十二指腸のAmpk依存性経路を活性化し、肝臓でのグルコース産生を低下させる

Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3787

メトホルミンは2型糖尿病に対する第一選択薬の1つだが、その作用機作はよく解明されていない。メトホルミンは、肝臓でのグルコース産生(HGP)の阻害により血糖値を低下させる。この作用は当初、肝細胞のAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)に依存した機序によるものと考えられていた。しかしその後の研究で、高血糖値の低下というメトホルミンの作用への肝AMPKの関わりは疑問視されるようになり、腸内の栄養素およびホルモンに誘導されるHGP低下を仲介する腸–脳–肝軸の存在が明らかになっている。従って、メトホルミンはこのような臓器間クロストークを介してHGPに影響を及ぼしている可能性がある。本論文では、3日間の高脂肪食(HFD)投与により誘発したインスリン抵抗性ラットモデルの十二指腸内にメトホルミンを50分間注入投与すると、十二指腸粘膜のAmpkが活性化され、HGPが低下することを示す。十二指腸のAmpkを阻害すると、十二指腸内メトホルミンのHGP低下作用が消失した。また、メトホルミンがHGPを低下させるには、十二指腸でのGlp-1r(glucagon-like peptide-1 receptor)–プロテインキナーゼA(Pka)シグナル伝達と、神経が仲介する腸–脳–肝経路の両方が必要だった。また、28日間にわたるHFD投与により誘導した肥満およびインスリン抵抗性のラットモデルと、ニコチンアミド–ストレプトゾトシン–HFDに誘発される2型糖尿病ラットモデルで、メトホルミンは栄養吸収前にHGPを低下させた。糖尿病ラットモデルで血糖クランプを行わない条件下で十二指腸Ampkを阻害すると、メトホルミン急速静注の血糖降下作用が低減した。これらの知見は、肥満および糖尿病の両方のラットモデルで、メトホルミンがこれまで知られていなかった十二指腸のAmpk依存性経路を活性化し、HGPおよび血糖値を降下させることを明らかにしている。

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