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がん:浸潤T細胞でのp38を活性化する代替経路の選択的阻害は膵がんのプログレッションを抑制する

Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3957

膵管腺がん(PDAC)は非常に悪性度の高い新生物で、顕著な繊維炎症性微小環境を特徴とし、こうした環境の存在ががんの誘導と増殖の両方を促進することがある。従って、局所のサイトカインを選択的に操作することは、治療手法として有望と考えられているが、実現してはいない。T細胞は、T細胞受容体(TCR)刺激の下流でp38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)をそのTyr323のリン酸化(pY323)を介して活性化するという独自の機構を持つ。この代替的なp38活性化経路は、炎症促進性サイトカインの産生に必要である。ヒトPDACでは浸潤性のpY323+ T細胞の割合が高い。本論文ではこれが腫瘍壊死因子α(TNF-α)およびインターロイキン17(IL-17)を産生するCD4+腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数の増加や疾患の悪性度に関連することを示す。マウス膵臓腫瘍の増殖は、p38を活性化するこの代替経路の遺伝的除去により抑制される。また、T細胞欠損マウスでの腫瘍増殖は、野生型CD4+ T細胞の移入で亢進したが、この代替経路を欠くT細胞では亢進は見られなかった。p38 pY323+の自然に生じる阻害因子であるGADD45-α由来の細胞膜透過性ペプチドは、マウスでのCD4+ TILによるTNF-α、IL-17A、IL-10および二次性サイトカインの産生を低下させ、移植腫瘍の増殖停止、KRAS駆動型自然発症腺がんのプログレッション阻止を引き起こした。従って、TCRが仲介するCD4+ TILの活性化は、代替経路でのp38活性化や腫瘍形成促進性因子の産生につながり、これは治療のための標的となると考えられる。

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