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神経変性疾患:タウが仲介する神経変性と認知障害におけるアセチル化の重要な役割

Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3951

前頭側頭型認知症(FTD)やアルツハイマー病(AD)などのタウオパチーは、タウ原繊維が蓄積する神経変性疾患である。可溶性タウ種が主要な有害種であることは、最近得られた証拠によって裏付けられているが、可溶性タウが集積して神経変性を起こす仕組みは分かっていない。今回我々はマウスで、タウの174番目のリシン(K174)のアセチル化がAD脳で見られる早期変化であり、タウの動的平衡状態と毒性の重要な決定因子であることを突き止めた。アセチル化を模倣する変異体であるK174Qでは、in vivoでタウの代謝回転が遅くなり、認知障害が誘発される。アセチルトランスフェラーゼp300が誘導するタウアセチル化は、タウの代謝回転を促進しタウ濃度を低下させるサルサレートおよびサリチル酸により阻害される。FTDのPS19トランスジェニックマウスモデルでは、疾患発症後のサルサレート投与はp300活性を阻害し、全タウおよびK174アセチル化タウの濃度を低下させて、タウ誘導性記憶障害を回復させ、海馬の委縮を防止した。サルサレートのタウ濃度を低下させて防御をもたらす働きは、K174Qタウを発現しているニューロンでは低下した。タウアセチル化を治療標的とすることはヒトタウオパチーに対する新たな治療戦略となる可能性がある。

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