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神経損傷:Idunaはポリ(ADPリボース)ポリマーが
誘発する細胞死の妨害によりグルタミン酸興
奮毒性と脳卒中から脳を保護する

Nature Medicine 17, 6 doi: 10.1038/nm.2387

N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体に作用するグルタミン酸は、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ1(PARP-1)の活性化と細胞死にかかわる分子であるポリ(ADPリボース)(PAR)ポリマーの産生を介して、脳卒中の後に神経損傷を引き起こす。今回我々は、以前に報告されたことのないNMDA受容体誘導性タンパク質で、細胞生存にかかわるIdunaがin vitroおよびin vivoの両方でグルタミン酸NMDA受容体介在性興奮毒性に対して神経保護作用を示し、またPARポリマー誘発性細胞死(parthanatos)を妨げることで脳卒中に対して保護作用を示すことを明らかにする。Idunaの保護効果はPARP-1活性とは無関係で、その下流で発揮される。IdunaはPARポリマー結合タンパク質であり、PARポリマー結合部位に変異が生じるとIdunaのPAR結合活性が消失して、その保護作用が減弱する。マウスでは、Idunaはin vivoでNMDA誘導性興奮毒性および中大脳動脈閉塞誘発性脳卒中に対して保護作用を示す。これらの結果は、Idunaが我々が知るかぎりで初めて見つかった内因性のparthanatos阻害因子であることを示している。PARポリマーシグナル伝達の妨害は、神経学的疾患に対する新たな治療戦略となる可能性がある。

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