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生理:アディポネクチンの多面的作用は受容体を
介したセラミダーゼ活性増強によって開始される

Nature Medicine 17, 1 doi: 10.1038/nm.2277

脂肪細胞由来の分泌因子であるアディポネクチンは、インスリン感受性を増強し、炎症を抑制し、細胞生存を促進する。アディポネクチンのこのように全身的かつ有益で多様な作用がどのようにしてもたらされるのか、それをまとめて説明できる機構は今までのところ明らかになっていない。本論文では、アディポネクチンは、その2つの受容体AdipoR1およびAdipoR2に付随するセラミダーゼ活性を強力に刺激し、セラミド異化とその抗アポトーシス性代謝物であるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の生成を増大させることを示す。これは、AMP依存性キナーゼ(AMPK)とは無関係な反応である。膵臓ベータ細胞と心筋細胞の誘発性アポトーシスのモデルを用いて、遺伝子導入によりアディポネクチンを過剰産生させるとカスパーゼ8を介した細胞死が減少するが、アディポネクチンを遺伝的に除去すると、in vivoでスフィンゴ脂質を介した経路によってアポトーシスが増えることがわかった。アディポネクチン受容体のアイソフォームの両方を欠損する細胞ではセラミダーゼ活性が低下しており、これがセラミドレベルの上昇とパルミチン酸誘導性細胞死に対する感受性上昇につながる。まとめると我々の観察結果は、アディポネクチンが発揮する有益な全身的影響に対する統一的作用機構を示唆しており、その中心となる上流のシグナル伝達構成要素がスフィンゴ脂質代謝であることを示している。

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