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呼吸器疾患:mTORシグナル伝達抑制因子Rtp801はタバコの煙による肺傷害と肺気腫のきわめて重要な媒介因子である

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2157

Rtp801(別名Redd1、Ddit4にコードされる)は、環境条件の悪化によって誘導されるストレス関連タンパク質であり、TSC1-TSC2抑制性複合体の安定化によってmTOR(mammalian target of rapamycin)を阻害し、また酸化ストレス依存的な細胞死を促進する。我々は、タバコ煙によって誘発される肺傷害、さらには肺気腫の発症に、Rtp801が増幅スイッチとして作用するのではないかと考えた。Rtp801のmRNAとタンパク質は、ヒトの気腫性肺、およびタバコ煙に暴露したマウス肺で発現が増加していた。タバコ煙によるRtp801発現調節は、プロモーター中のCCAAT応答配列の酸化ストレスによる活性化に依存している可能性がある。また、Rtp801は培養細胞でのNF-κ B活性化に必要かつ十分であり、マウス肺で強制発現させた場合には、NF-κ B活性化、肺胞の炎症、酸化ストレスおよび肺胞中隔細胞のアポトーシスが促進されることがわかった。対照的に、Rtp801ノックアウトマウスは、タバコ煙誘導性の急性肺傷害が明らかに起こりにくく、その一因はmTORシグナル伝達の増強であり、またタバコ煙に慢性的に暴露したときには肺気腫が防がれた。我々のデータは、Rtp801がタバコ煙による肺傷害の重要な分子センサーおよび媒介因子であるという考えを裏づけている。

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