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2010年を振り返る

Nature Medicine 16, 12 doi: 10.1038/nm1210-1359a

もし、2010年の生物医学界に学ぶべきことがあるとするなら、それは「予想外の事態を予想しておくべきだ」ということだろう。予想外の出来事がいろいろ起こった中で、もっとも意外だったことのひとつは、乳がん遺伝子BRCA1BRCA2に関してミリアド・ジェネティクス社が持っていた特許が米国連邦裁判所によって無効とされたことである。また、オバマ大統領が解禁したヒト胚性幹細胞研究への連邦助成支出を禁止する仮差し止め命令をワシントン連邦地裁が出したのも予想だにされなかったことだった。
唾液サンプルキットを使って消費者に直接提供される遺伝子検査について、米国食品医薬局(FDA)と政府説明責任局が懸念を公表したことや、英国で多発性硬化症患者数人に幹細胞を注入する治療を施した医師が免許を剥奪されたことのような幹細胞治療に関するニュースは度々報じられ、人々の関心を集めた。その一方、希望を持たせるような研究成果ももちろん発表された。中国国家自然科学基金は1月に、米国立衛生研究所と同じような医学部門を発足させた。また、4月にはシアトルに本拠をおくDendreon社のがんワクチンが初めてFDAに承認された。このYearbook特集では、ニュースのヘッドラインに登場した「今年のひと」6人をまず選び、この12か月間のできごとをいろいろな視点から振り返って整理しなおし、2010年の「大躍進」や「大転落」などについても、上述したようなさまざまトピックについて拾い上げてみた。

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