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がん:髄芽腫の形成における一次繊毛の相反する2つの役割

Nature Medicine 15, 9 doi: 10.1038/nm.2020

最近の研究で、一次繊毛が哺乳類の発生過程でのヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達に不可欠であることが示されている。また、異常なHhシグナル伝達はがんにつながりうることも知られているが、発がんにおける一次繊毛の役割は明らかにされていない。小脳顆粒細胞・ニューロン前駆細胞(GNP)は、小児の最もよくみられる悪性脳腫瘍である髄芽腫を形成することがあり、一次繊毛とHhシグナル伝達はGNPの増殖に必要とされる。我々は、マウスでGNPの一次繊毛が髄芽腫増殖にかかわっているかどうかを検討した。Hhシグナル伝達の上流の活性化因子であるSmoothenedタンパク質(Smo)の構成的活性化によって髄芽腫が生じた場合には、一次繊毛を遺伝的に除去すると、髄芽腫形成が阻害された。対照的に、下流の転写因子であるGLI2(glioma-associated oncogene family zinc finger-2)の構成的活性化による髄芽腫の増殖には繊毛除去が必要であった。したがって、一次繊毛は、発がんを開始させる事象によって、髄芽腫形成に必要であったり、あるいはそれを阻害したりする。繊毛の有無と、ヒトの髄芽腫の特定の型の間に関連がみられたことは注目すべきである。つまり、HHあるいはWNTシグナル伝達が活性化している髄芽腫には一次繊毛がみられたが、他の分子的サブグループに入る髄芽腫の大部分ではみられなかった。一次繊毛は、診断手段として有用と考えられ、また腫瘍形成機構を考察する新しい手がかりとなる。

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