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アルツハイマー病:アルツハイマー病患者の脳から直接単離されたアミロイドβタンパク質二量体はシナプス可塑性と記憶を損なう

Nature Medicine 14, 8 doi: 10.1038/nm.1782

アルツハイマー病は、公衆衛生に対する大きな脅威となりつつある。細胞および 動物モデルを対象に詳細な研究が行われているにもかかわらず、ヒトの脳での病因物質の発見と、それがアルツハイマー病の重要な特徴を生じることの実証はいまだに成功していない。我々は、可溶性アミロイドβタンパク質(Aβ)オリゴマーを、アルツハイマー病患者の大脳皮質から直接抽出した。このオリゴマーは、正常な齧歯類の海馬で長期増強(LTP)を強く阻害し、長期抑圧(LTD)を促進し、樹状突起棘の密度を低下させた。アルツハイマー病の脳由来の可溶性Aβは、 正常ラットの学習された行動の記憶も損なった。このような多様な作用は、Aβ二量体に特異的に起因すると考えられた。機構的には、LTDの強化には代謝型グルタミン酸受容体が必要であり、また棘の消失にはN-メチルD-アスパラギン酸受容体が必要であった。AβのN末端に対する抗体の同時投与により、LTPおよびLTDの異常は防がれたが、中間領域またはC末端に対する抗体の有効性は低かった。アルツハイマー病患者の大脳皮質に由来する不溶性アミロイドプラークのコアは、可溶化されてAβ二量体を遊離しない限りLTPを損なわなかったことから、プラークのコアはほぼ不活性であり、シナプス毒性をもつAβ二量体を隔離していることが示唆される。我々は、アルツハイマー病患者の脳から抽出された可溶性Aβオリゴマーが、シナプスの構造および機能を強く損なうこと、また二量体がシナプス毒性をもつ最小分子であると結論する。

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