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白血病:t(8; 21)転座により生じる転写産物で異なる選択的スプライシングを受けた未同定のアイソフォームは白血病発生を促進する

Nature Medicine 12, 8 doi: 10.1038/nm1443

t(8;21)(q22; q22)の転座は、急性骨髄性白血病(AML)で最も一般的にみられる遺伝的異常の1つで、AMLの全症例の15%でみつかっており、その中にはFAB分類のM2サブタイプの40-50%とM0、M1およびM4サブタイプのまれな症例が含まれる。この転座から生じるAML1-ETO融合タンパク質で最もよく知られているもの(完全長のAML1-ETO)は752個のアミノ酸からなり、これにはRUNX1(別名AML1、CBFα2あるいはPEBP2αB)のN端末部分(DNA結合ドメインを含んでいる)、およびRUNX1T1(別名MTG8あるいはETO)タンパク質のほぼ全長が含まれている。AML1-ETOの存在下では遺伝子発現や造血細胞の増殖に変化が生じることが報告されているが、AML1-ETOの発現は白血病の発症にはつながらない。本論文では、AML1-ETO転写産物のまた別のスプライシングによって生じる、これまで知られていなかったアイソフォームAML1-ETO9aの同定について報告する。AML1-ETO9aには、ETO遺伝子に含まれるもう1つ別のエキソンであるエキソン9aが含まれている。AML1-ETO9aは、575個のアミノ酸からなるC末端短縮型AML1-ETOタンパク質をコードしている。マウスのレトロウイルス導入による移植モデルでは、AML1-ETO9aの発現により白血病が急速に発症する。AML1-ETOとAML1-ETO9aの共発現によってAMLの発症がかなり早められ、骨髄細胞の分化がより未成熟な段階で阻害されることはさらに重要である。これらの結果は、染色体転座が起こった際に異なる形のスプライシングによって生じるアイソフォーム由来の融合タンパク質が協同的にはたらいて癌の発症を引き起こす可能性を示している。

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