Technical Report

量子ドット構造をもつナノ結晶と蛍光発光走査型顕微鏡で転移腫瘍細胞の血管外

Nature Medicine 10, 9 doi: 10.1038/nm1096

遊出を追跡転移は有効な癌治療法を開発するうえで厄介な問題である。転移の過程をin vivoでたどることができないため、これに関する現在の知識は限られている。生きた状態の動物で細胞を高精度で追跡するのに使えそうなのが、蛍光顕微鏡である。この目的のためには、有機蛍光発色団よりも半導体ナノ結晶つまり量子ドット(QD)のほうが優れている。我々はQDと発光スペクトル走査型多光子顕微鏡を使い、in vivoで細胞の血管外遊出を調べる方法を開発した。QD標識法は培養細胞では有害な影響がまったくみられないが、in vivoでは毒性となる可能性が懸念されるため、こうした細胞追跡研究にQD標識法を使うことに対しては否定的意見がある。我々は、QD標識法の影響がin vivoで現れるかどうかを調べるため、QDで標識した腫瘍細胞をマウスに静脈注射し、細胞が肺組織内に遊出するようすを追跡した。QD標識した腫瘍細胞のin vivoでの挙動は、標識しない細胞のものと見分けがつかなかった。そしてQDと分光画像技術により、多光子レーザー励起を利用して5種類の細胞集団を同時に特定できた。この成果により、in vivo研究でのQD使用の安全性が立証され、なおかつin vivoでの多細胞相互作用の研究も可能となる。

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