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ヒトゲノムデータのより優れたガバナンスを目指して

Nature Genetics 53, 1 doi: 10.1038/s41588-020-00742-6

生物医学研究のために収集、保存、キュレーションされるヒトゲノムデータは劇的に増加している。本稿では、情報への広範なアクセスを可能にすると同時に、生じ得る弊害を未然に防ぐために、ゲノムデータのリポジトリやコンソーシアムが策定してきたデータガバナンスの枠組みについて論じる。しかしながら、これら2つの並立する目的を達成する上で、ガバナンスの各種の枠組みにはそれぞれに利点と欠点があり、科学界では今もなお継続的な議論が行われている。実際のところ、ゲノムデータベースのためのガバナンスの枠組みを策定する際に参考となるような、模範事例や考慮すべき事項のまとめはほとんど見当たらない。ここでは、ガバナンスの枠組みを策定し評価してきた我々の経験に基づき、「優れたガバナンス」(あるいは「相対的に優れたガバナンス」)が果たすべき5つの重要な役割を指摘し、その役割の範囲で方針を定める際にトレードオフ(二律背反)を考慮する必要が生じる3つの状況を例示する。最後に、6つの大規模国際ゲノム研究プロジェクトを例に取り、これら5つの役割を比較のポイントとしてガバナンスの枠組みを説明する。

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