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初期発生:培養系で初期胚様細胞を出現させるための分子的ロードマップ

Nature Genetics 50, 1 doi: 10.1038/s41588-017-0016-5

全能性細胞は、胚組織のみを作り出す多能性細胞とは異なり、胚体外組織を含む完全な生物を作り出すことができる。多能性を持つ胚性幹(ES)細胞を培養すると、2細胞期胚に類似した希少な細胞集団が生じる。このような2細胞期様細胞は、全能性や広範な発生可塑性の分子的特徴を示す。しかし、これらの細胞がどのような特性を示すかや、どのような過程で生じるのかはまだ解明されていない。本論文では、2細胞期様細胞が出現する際の中間的な細胞状態と分子的な決定要因を明らかにした。定量的な単一細胞発現プロファイリング法を開発することで、転写因子ZSCAN4の発現を特徴とする中間的な細胞集団が、2細胞期様細胞の前駆細胞であることを突き止めた。低分子干渉RNA(siRNA)スクリーニングにより、2細胞期様細胞の出現を制御するエピジェネティックな因子を同定した。これらには非カノニカルなPRC1複合体であるPRC1.6やEP400–TIP60複合体が含まれている。我々のデータにより、培養系においてES細胞状態から脱出して初期胚様細胞の形成に向かう基礎となる機構の謎が解け、この移行を促進するのに重要なエピジェネティックな経路が同定できた。

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