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ショウジョウバエにおける幹細胞非対称分裂の異常による腫瘍成長の誘発

Nature Genetics 37, 10 doi: 10.1038/ng1632

細胞極性の喪失と癌は密接に関連しているが、その因果関係に関する証明はいまだはっきりとはなされていない状況である。幹細胞においては、極性の喪失と非対称分裂の欠陥によって細胞運命が変更されており、その結果、娘細胞は増殖を制御する機構に反応することができなくなっている可能性がある。この仮説を検証するため、我々は、非対称細胞分裂を制御する各種遺伝子に突然変異をもつ、ショウジョウバエDrosophila melanogasterの幼虫の神経芽細胞を作製し、成虫宿主に移植後の変異型神経芽細胞の増殖能を調べた。我々は、rapspinsとも呼ばれる)、 miranumb、 あるいはprosに変異のある神経芽細胞をもつ幼虫の脳組織が、最初の大きさの100倍以上に成長して、他の組織に浸潤し2週間で宿主を死に至らしめることを見つけた。これらの腫瘍は不死化しており、長期にわたって新たな宿主に再移植することができた。最初の移植から6週間で、これらの腫瘍に、悪性腫瘍の2つの特徴であるゲノム不安定性と中心体の異常が出現した。他の多くの証拠から、いくつかの腫瘍はおそらく幹細胞由来であることが示唆されている。我々の研究結果は、幹細胞の分裂から生じる娘細胞の運命を制御するいくつかの遺伝子の機能が喪失すると、それがどのような遺伝子であっても、過剰増殖を引き起こすおそれがあり、一般的な意味での細胞の恒常性を覆して発癌を招くような一連の事象を誘発していることを示している。

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