Where I Work

Doreen Anene

Credit: Nature by Adam Wiseman

発展途上国の畜産農家の多くは、貧困の中で暮らしています。特に女性は、男性のように土地を取得したり、信用を得たり、訓練を受けたりすることが困難で、極めて不利な立場に置かれることが多いのです。私が農業と動物科学の研究者になったのは、ナイジェリアのザリアという街で、こうした人々を見て育ったことが大きいと思います。

家禽は、狭い土地でも短期間で育てることができます。女性の自立を促し、畜産の生産性を高めることができれば、女性たちは子どもにしっかりとした食事を与えることや、教育を受けさせることができ、貯金をして貧困から脱することができます。

写真は、私が検卵器を使って卵の品質を評価しているところです。私は博士号を授与された研究の中で、体重の重い雌鶏(めんどり)は飼料–卵変換率が低く、異常な卵を多く形成することを発見しました。つまり、畜産農家が雌鶏の性成熟を早めようとして過剰に餌を与えると、かえって利益を損なう恐れがあるのです。

低所得国の少女たちはしばしば「女が科学をやっていると結婚できないし、家事もできない」「数学は男の子のものだ」などの固定観念を吹き込まれて育ちます。少女が科学者になりたいと思っても、ロールモデルも、指導者も、助成もありません。科学・技術・工学・数学(STEM)分野のジェンダーギャップを埋めるため、私は2017年に非営利団体「STEM Belle」を設立しました。

私たちはナイジェリア、ガーナ、パキスタンの学校に女性科学者を招いて、STEM分野のキャリアについて講演をしてもらったり、少女たちがプログラミングや電子工学やロボット工学を学ぶ機会を提供したりしています。学術賞の贈呈や、中等学校で科学を学ぶために必要なものが入ったキットの配布もしています。STEMブートキャンプやアンバサダープログラムの実施や、教師育成奨励金の支給も行っています。STEM Belleは、これまでに5000人以上の少女に恩恵をもたらしており、その影響力をさらに高めるために、協力者や助成、寄付を募っています。

私自身は中流家庭に生まれ、理解ある両親の下で育ちました。私にとっての成功とは、神様が私の手に置いてくださったものを、より多くの人々、特に少女たちと分かち合い、その成長を見ることなのです。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2022.221246

原文

Improving livestock to fight poverty and empower women
  • Nature (2022-07-04) | DOI: 10.1038/d41586-022-01831-8
  • Nic Fleming