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地球上の生物―その現状は?

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150312

原文:Nature (2014-12-11) | doi: 10.1038/516158a | Life – a status report

Richard Monastersky

現在、地球上からは生物種が次々と姿を消しており、次なる大量絶滅の発生も時間の問題ではないかと危惧されている。だが、その深刻さを正確に評価して対策を講じるのに必要な現状把握は、実際のところ極めて難しい。

「絶滅の脅威にさらされる生物」PDF
絶滅危惧IA類のタターサルシファカ(Propithecus tattersalli)。

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絶滅危惧IB類のタンチョウ(Grus japonensis)。

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絶滅危惧IB類のナガレアマガエル(Litoria nannotis)。

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過去35億年の間に地球上に生息した全ての生物種のうち、95%以上がすでに姿を消しており、その多くは「大量絶滅」と呼ばれる大規模な絶滅事象で失われた。こうした過去の絶滅事象については、研究者の間で見解がほぼ一致しているが、現存する全生物種の数や、それらが今後どのくらいの速さで消えていくかを推定するとなると、不確実性の方が高いのが現状だ。

現存する動植物および菌類の総種数を見積もった複数の研究結果からは、下は200万未満から上は5000万以上までと、かなり幅のある数字が算出されている。この原因は、抽出されたサンプルが地球全体の生物多様性のごく一部を反映したものでしかないこと、また、未知の生物種のほとんどが限られた地域に生息しており、そうした生息地の多くが今まさに急速に破壊されつつあることにある。

国際自然保護連合(IUCN)は、2014年11月に発表した「絶滅危惧種に関するレッドリスト」の最新版で、情報不足による算定値の不確実性を指摘している。最新版レッドリストでは、旧版の種数を大きく上回る7万6000種以上が評価されているが、この数は、研究者がこれまで論文などに記載してきた170万種以上に及ぶ既知の種数(記載種)のわずか4%にすぎない。特に、魚類や爬虫類、昆虫類といった分類群は評価が十分に行われておらず、絶滅危惧のランクを確実に判定することができない状態だ。

こうした問題点に留意しつつ、Natureはこのたび、入手可能で最も信頼のできるデータを統合して、地球上の生物に関する現状報告をグラフで描き出した(「絶滅の脅威にさらされる生物」参照)。評価が可能な分類群のうち、最も突出して危機的状況にあるのは両生類で、カエルツボカビ症の壊滅的な蔓延などにより記載種の実に41%が絶滅の危機に瀕している。また、哺乳類と鳥類では、生息地の消失や環境悪化、さらには狩猟などの人為活動が原因で、かなりの種が重大な脅威にさらされている。

現状把握以上に困難なのが、将来像の予測である。気候変動の影響で生物種の絶滅が加速することはおそらく確実だが、そうした影響の速度やパターンを予測するのが難しいために、どのように種数の減少が進むのかは分かっていない。将来を予測する単純な方法の1つは、絶滅の速度が今後も一定に保たれると想定することだろう。しかし、その基準となるべき「現在の絶滅速度」も、想定値は、現存する全生物種に対する絶滅種の割合にして1年当たり0.01~0.7%とかなり幅がある。「将来の絶滅速度の予測となると、不確実性は桁外れに高くなります」と話すのは、ドイツ統合生物多様性研究センター(iDiv;ライプチヒ)の生態学者Henrique Pereiraだ。

この絶滅速度の上限を使って計算すると、毎年、数千種の生物が姿を消していることになり、この傾向が続くとすれば、今後数百年の間に次なる大量絶滅(全生物種の75%が絶滅)も起こりかねない。

生物保全策によって絶滅の速度を緩めることは可能だろう。しかし、現状からみてあまり期待はできない。世界各国が陸上や海洋に保護区域を増やしてはいるものの、生物多様性に関する測定値の多くは、生物種にかかる圧力が増加していることを示しているのだ。「総体的にみて生物多様性の状態は悪化しており、その多くが深刻な状態です」と、国連環境計画(UNEP)世界自然保護モニタリング・センター(英国ケンブリッジ)の海洋生態学者Derek Tittensorは話す。

こうした不確実性を全て勘案した上で、研究者らは、生物多様性に対する現在および将来のリスクを評価することに今以上に注力する必要があると考えている。その手段の1つが、人為活動が生態系にどのような変化をもたらし得るかを予測できる、包括的なコンピューターモデルの開発だ。ただ、一般生態系モデル(General Ecosystem Model;GEM)と呼ばれる一連のモデル研究はまだ始まったばかりで、この種の全球モデル第1号を使った初めての研究が報告されたのは、2014年4月とごく最近だ(M. B. J. Harfoot et al. PLoS Biol. 12, e1001841; 2014)。Tittensorらが開発したこの機構論的GEMは、大気や海洋をシミュレートする気候モデルと似たやり方で、地球上の主要な生態学的相互作用全ての再現を試みている。このGEMの構築には3年もの時間を要したが、その理由の1つは、このモデルを体重が10µg(微小プランクトンなど)から15万kg(シロナガスクジラなど)までの幅広いサイズの生物種全てに対応させようとしたことにある。Tittensorによると、このモデルはまだ完成品ではなく、さらなる開発とテストが必要だという。彼はまた、GEMの可能性について、「さまざまな種類のGEMができることが理想ですが、1台のコンピューターで広範な生物種の状況をうまく捉えることができれば、これまで気付くことすらできなかったような問題をも認識し、警戒することができるようになるでしょう」と話す。

(翻訳:船田晶子)

Richard Monasterskyは、ワシントンDC在住のNature編集者。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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