2015年12月号Volume 12 Number 12
分子マシンの時代がやってきた
生体分子をお手本に、化学者たちはラチェット、スイッチ、モーター、ロッド、リング、プロペラなどの、組み合わせて使えるナノスケールの部品をたくさん生み出してきた。そして、いよいよ人工「分子マシン」としての利用が可能な時期に入ったと考える研究者が増えてきた。人工筋肉のような肉眼で見える物体を作れるようになるのはまだ先のことだろうが、現在、体内の狙った場所で薬物を放出する光駆動スイッチや、エネルギーを蓄えたり光に応答して伸び縮みしたりするスマート材料などが次々と開発されている。
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データを活かせ! 人類遺伝学会の2誌体制 ─ 編集長に聞く
Editorial
News
雄の線虫で「ミステリー」ニューロン発見
調べ尽くされたと考えられていた線虫の神経系で、新たなニューロンが発見された。雄にしか見られないこの謎のニューロンに、神経科学者たちは関心を寄せている。
脳スキャンデータで個人を特定できる
脳領域間の神経接続のパターンには明確な個人差があり、「指紋」として利用できることが実証された。実際に個人を特定できるだけでなく、知能検査の成績を予測することもできるという。
ゾウはなぜ、がんになりにくいのか
「Petoのパラドックス」と呼ばれるこの問いに、答えの1つとなり得る発見があった。
顧みられない熱帯病の治療薬を開発した3氏に医学生理学賞
寄生虫感染症の治療薬を発見した業績で、3人が共同受賞した。中国人研究者の受賞は初。
ニュートリノ振動の発見にノーベル物理学賞
ニュートリノの変わり身の謎を解いた2人の物理学者がノーベル物理学賞を受賞した。
DNA修復の研究者3氏にノーベル化学賞
DNA重要な3つの修復機構である塩基除去修復、ヌクレオチド除去修復、ミスマッチ修復の仕組みを明らかにした3氏が、化学賞を共同受賞した。
クラウドソーシングで掘り当てた未知の初期人類
南アフリカの洞窟で未知の化石人類のものと思われる大量の骨が発掘された。このプロジェクトを率いる古人類学者は、ソーシャルネットワークを使って協力を呼び掛けることで発掘時から作業を進めてきた。 現在は、化石データを公開して研究者らの意見を求めている。
小児への脳刺激の有望性と懸念
学習障害のある小児の脳を電気刺激する試験が行われ、有望な結果が得られた。その一方で、安易な使用などによるリスクの増大が懸念される。
成長ホルモン療法の患者にアルツハイマー病の恐れ
死後脳由来のヒト成長ホルモン製剤の投与を受け、クロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった患者の脳内で、アミロイド斑が見つかった。この製剤を注射したことが原因でできた可能性が示唆されるという。
86もの流星群を発見したCAMS
監視カメラを何台もつないだ「全天流星監視カメラ(CAMS)プロジェクト」により、これまで知られていなかった86の定常流星群が流星群カレンダーに加わった。
News Feature
分子マシンの時代がやってきた
化学者たちは、生物から着想を得て、スイッチやモーター、ラチェットとして機能するさまざまな分子部品を創り出してきた。そして近年、これらの微細な部品を使ったナノスケールの機械が続々と発表されている。
Japanese Author
わずか6種のタンパク質で染色体凝縮を再現
1つのヒト細胞に含まれるゲノムDNAは、全長約2mに達する。分裂の過程で複製したDNAを正確に分配するには、規則正しく折りたたんで染色体へと「凝縮」させる必要がある。理化学研究所の平野達也主任研究員は、この過程のカギとなるタンパク質複合体「コンデンシン」を1997年に発見。さらに2015年、わずか6種の精製タンパク質から試験管内で染色体を作る実験系の開発にも成功した。
News & Views
心筋の治癒を促すタンパク質Fstl1
ヒトの心臓組織は再生する能力が非常に低く、損傷を受けると徐々に機能が低下していく。このたび、心臓の外膜領域の細胞が通常発現しているタンパク質Fstl1が、心臓発作により損傷した心筋の再生を誘導できることが分かった。
海のプランクトンが雲を作る
海洋上の大気中には、海面での泡の破裂などによって海洋生物由来の微粒子が舞い上がり、漂っている。今回、海の植物プランクトンなどに由来する微粒子が核となり、空気中の水分の凍結を促して氷雲(氷の微小な結晶でできている雲)を発生させていることが分かった。特に高緯度の海域では、これまで考えられていたよりも高い温度や低い湿度であっても氷雲が発生するとみられる。
News Scan
サルが常用する薬
樹皮を食べるのは病気を治すためらしい
合成リボソームで新タンパク質を
人工細胞の実現に一歩