Research Abstract

巻き方向の左右逆転によってカタツムリに種分化を引き起こす遺伝子は対捕食者適応を生じさせる

本研究では、大多数を占める右巻きカタツムリを捕食するように特殊化したヘビの存在が、被食者における巻きの逆転による種分化を促進することを示す。

A speciation gene for leftright reversal in snails results in anti-predator adaptation

2010年12月7日 Nature Communications 1 : 133 doi: 10.1038/ncomms1133 (2010)

種分化を引き起こす遺伝子がどのようにして集団内に広がっていけるのか、その仕組みは十分には明らかになっていない。カタツムリでは、巻きの左右逆転にか かわる単一の遺伝子が急速な種分化の原因となることがあるが、これは右巻きと左巻きのカタツムリの間では交尾が難しいからである。しかし、種分化に関する 従来の2遺伝子座モデルは、巻きの逆転による交配上の不利がこの種分化を妨げるように働くと予測している。本研究では、大多数を占める右巻きカタツムリを 捕食するように特殊化したヘビの存在が、被食者における巻きの逆転による種分化を促進することを示す。我々は、左巻きのニッポンマイマイ属(柄眼目ナンバ ンマイマイ科)がイワサキセダカヘビ(Pareas iwasakii;ナミヘビ上科セダカヘビ科)による捕食から逃れ生き残ることを、実 験により明らかにした。世界規模の生物地理学的研究により、柄眼目カタツムリの巻きの逆転による種分化はセダカヘビ類の生息域で加速されていることが判明 し、その傾向は特に、左巻きになることでヘビに対して特に強い防御機能を得られるものと、右巻きのカタツムリから強く生殖的に隔離されるカタツムリで著し いことがわかった。ニッポンマイマイ属の分子系統学的研究からも、ヘビによる捕食のもとで種分化が繰り返し起こったことを示す証拠が得られている。我々の 研究は、種分化にかかわる遺伝子が、生存に対する多面発現的な正の効果により、集団中に固定可能であることを示している。

細 将貴1, 亀田勇一2, 呉 書平3,4, 浅見崇比呂5, 加藤 真2,6 & 堀 道雄7

  1. 東北大学生命科学研究科
  2. 京都大学大学院人間・環境学研究科
  3. 台北市立教育大学(台湾)
  4. 国立台湾大学(台湾)
  5. 信州大学理学部生物科学科
  6. 京都大学大学院地球環境学堂
  7. 京都大学大学院理学研究科

How speciation genes can spread in a population is poorly understood. In land snails, a single gene for left–right reversal could be responsible for instant speciation, because dextral and sinistral snails have difficulty in mating. However, the traditional two-locus speciation model predicts that a mating disadvantage for the reversal should counteract this speciation. In this study, we show that specialized snake predation of the dextral majority drives prey speciation by reversal. Our experiments demonstrate that sinistral Satsuma snails (Stylommatophora: Camaenidae) survive predation by Pareas iwasakii (Colubroidea: Pareatidae). Worldwide biogeography reveals that stylommatophoran snail speciation by reversal has been accelerated in the range of pareatid snakes, especially in snails that gain stronger anti-snake defense and reproductive isolation from dextrals by sinistrality. Molecular phylogeny of Satsuma snails further provides intriguing evidence of repetitive speciation under snake predation. Our study demonstrates that a speciation gene can be fixed in populations by positive pleiotropic effects on survival.

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