Author interview

季節的な気候による食糧生産の変動を、世界規模で予測する手法を開発

2013年10月号掲載

研究の背景

近年、人口増加や新興国の経済発展、バイオ燃料需要の増加により食糧需給が逼迫(ひっぱく)傾向にあります。このため、干ばつなどで世界の主要な生産地域がひとたび不作になると、食糧の国際市場価格が高騰し、特に開発途上地域の低所得層の栄養状態が悪化するなどの問題が生じます。現在、世界の食糧需給の状態を監視するシステムは、国連食糧農業機関などで稼働していますが、今のところ、気候予測に基づく穀物の豊凶予測はこうした監視システムには組み込まれていません。そこで、今回の研究では、季節予測と呼ばれる1か月から1年程度先の気候予測を用いた場合に、世界規模での豊凶をどの程度の信頼性で予測できるかを評価しました。

今回の研究で新たに分かったこと

図1: 収穫3ヶ月前の季節予測によるコムギの主要輸出国での豊凶予測
米国とオーストラリアにおける実際のコムギの豊凶(黒線)と収穫3ヶ月前時点で生育後期3ヶ月間の平均の気温と土壌水分量を予測し、豊凶を予測した数値(赤線)。国名の脇の数字は、当該国のコムギの全栽培面積に占める豊凶を予測できた栽培面積の割合。示した図は豊凶が予測できた地域のデータのみを集計して使用。なお、米国は2008年におけるコムギの輸出量が世界第1位、オーストラリアは第6位。 | 拡大する

今回得られた結果から、気温と土壌水分量の季節予測を用いることで、コムギとコメの豊凶を世界の栽培面積の約2割について、収穫3か月前に予測できることが示されました。季節予測の精度がさらに向上すれば、この数字は世界の栽培面積の約3割にまで上げられると見込まれます。

今回の研究の意義

これまでの季節予測による豊凶予測はオーストラリアなどの特定の地域が対象とした研究しかなく、世界を対象とする評価は今回の研究が初めてです。今後、この豊凶予測の信頼性を向上させることで、各国の備蓄量の調節や輸入先の選択などに資する情報として豊凶予測が利用できるようになり、より効果的な飢餓対策への道が拓けると期待されます。

cover

世界の食料生産の気候による季節変動の予測

Prediction of seasonal climate-induced variations in global food production

Nature Climate Change 10, 904–908 (2013) doi:10.1038/nclimate1945

Corresponding Authors

飯泉 仁之直

飯泉 仁之直

独立行政法人農業環境技術研究所 大気環境研究領域
農業環境技術研究所の食料生産変動予測リサーチプロジェクト所属。

世界の穀物生産の時間・空間的な変動と気候と水資源、土地利用が変化する将来における食料生産リスクについて研究しています。今回の研究が示した季節予測に基づく豊凶予測は、将来の食料生産リスクを低減するうえで重要な方策と考えられます。

佐久間 弘文

佐久間 弘文

独立行政法人海洋研究開発機構 横浜研究所アプリケーション・ラボ兼地球環境変動領域
(独)海洋研究開発機構の地球環境変動領域およびアプリケーション・ラボ 所属。

海洋機構が地球シミュレータを使用して、これまでの10年間に行って来た熱帯域短期気候変動モードの予測可能性研究に関し、世界をリードして来た成果を様々な応用分野へと繋げる活動をしています。今回の成果は、農業分野への大きな貢献と位置付けています。

「著者インタビュー」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度