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腫瘍進行特性をもつヒト胚性幹細胞の解析

Nature Biotechnology 27, 1 doi: 10.1038/nbt.1516

培養ヒト胚性幹(hES)細胞は、形質転換を起こしやすくなる遺伝的、後成的変化を生ずる場合がある。がん細胞の特徴をもつhES細胞は、自己複製、奇形腫形成、多能性マーカー発現など、正常なhES細胞と同じ特性をもつため、「幹細胞性」が高い優れたhES細胞と誤認される可能性がある。本論文では、多能性マーカーを大量に発現し、標準的な細胞遺伝学的方法では染色体異常が検出されない2種類のhES細胞変異株(v-hESC-1およびv-hESC-2)を解析した。この2細胞株は、高い増殖能、成長因子非依存性、腫瘍開始細胞出現率の9〜20倍の上昇、ニッチ非依存性、および異常な細胞の分化のような腫瘍進行特性をもつが、悪性ではないことが明らかになった。アレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションにより、v-hESC-1株では20q11.1-11.2の増幅、v-hESC-2株では5q34a-5q34b;5q3の欠失および12番染色体モザイクの出現が示された。この結果は、部分的に形質転換したhES細胞と正常hES細胞を識別するための機能的解析の必要性を強調している。

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