Nature ハイライト

核物理学:アクチノイドの質量非対称な分裂の謎

Nature 564, 7736

アクチノイドなどの重い原子核は、分裂すると重い分裂片と軽い分裂片へ分かれる。この非対称性は分裂片に強い殻効果が存在するため生じると長い間考えられていたが、そうすると、陽子数(Z)と中性子数(N)のいくつか組み合わせではこの効果によって球形が有利になると思われる。Z = 50とN = 82は閉じた陽子殻と閉じた中性子殻を示しているため、分裂するアクチノイドの重い分裂片は球形の核132Snに近くなるはずである。しかし、既存の研究では、Z = 52からZ = 56の辺りに重い分裂片が見られることが示されている。今回G ScampsとC Simenelは、144Ba(Z = 56)の辺りで最近実験的に確かめられた洋ナシ形の八重極変形によっても、この分裂片の最終的な質量非対称性が決まることを理論的に示している。著者たちは、超流動体分裂ダイナミクスの量子多体モデルを使って、実際に陽子が52〜56個の重い分裂片が主に生成されるとともに、分裂への途中で獲得した大きな八重極変形が関連していることを見いだしている。今回の結果は、より軽い核の質量非対称な分裂の観測結果を説明するのに役立つ可能性がある。

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