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古生物学:ジュラ紀の魚竜の恒温性および保護色を示す軟組織の証拠

Nature 564, 7736

約1億8000万年前の魚竜の化石の画像(上)とその図示(下)。
約1億8000万年前の魚竜の化石の画像(上)とその図示(下)。 | 拡大する

Credit: Johan Lindgren

魚竜類は絶滅した海生爬虫類で、その外見は現生のハクジラ類と極めて類似している。今回我々は、この類似性が表面上だけのものではないことを示す。我々は、領域横断的な実験手法を適用して、前期ジュラ紀の魚竜であるステノプテリギウス(Stenopterygius)の極めて保存状態の良好な標本において、皮膚組織の細胞組成および分子組成を調べた。その結果、鱗のない本来の皮膚の痕跡が柔軟な状態を保ったままで回収され、これらは形態的に異なる表皮層と真皮層で構成されていることが分かった。その下には保温用の脂肪層が存在し、この脂肪層が体の流線形化、浮力、恒温性を高めていたと考えられる。さらに、内因性のタンパク質成分および脂質成分が、角化細胞と、ユーメラニン色素を含む分枝した黒色素胞と共に発見された。全身の黒色素胞分布の差異はカウンターシェイディングの存在を示唆しており、これは光防御、保護色、体温調節を可能にするための生理学的な体色調節によって強化されていた可能性がある。このように、魚竜類と現生海生羊膜類との収斂は超微細構造や分子のレベルにまで及んでおり、これは、外洋生活への共通した適応には遍在する制約があることを反映している。

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