Nature ハイライト
古生物学:ジュラ紀の魚竜の恒温性および保護色を示す軟組織の証拠
Nature 564, 7736

Credit: Johan Lindgren
魚竜類は絶滅した海生爬虫類で、その外見は現生のハクジラ類と極めて類似している。今回我々は、この類似性が表面上だけのものではないことを示す。我々は、領域横断的な実験手法を適用して、前期ジュラ紀の魚竜であるステノプテリギウス(Stenopterygius)の極めて保存状態の良好な標本において、皮膚組織の細胞組成および分子組成を調べた。その結果、鱗のない本来の皮膚の痕跡が柔軟な状態を保ったままで回収され、これらは形態的に異なる表皮層と真皮層で構成されていることが分かった。その下には保温用の脂肪層が存在し、この脂肪層が体の流線形化、浮力、恒温性を高めていたと考えられる。さらに、内因性のタンパク質成分および脂質成分が、角化細胞と、ユーメラニン色素を含む分枝した黒色素胞と共に発見された。全身の黒色素胞分布の差異はカウンターシェイディングの存在を示唆しており、これは光防御、保護色、体温調節を可能にするための生理学的な体色調節によって強化されていた可能性がある。このように、魚竜類と現生海生羊膜類との収斂は超微細構造や分子のレベルにまで及んでおり、これは、外洋生活への共通した適応には遍在する制約があることを反映している。
2018年12月20日号の Nature ハイライト
古生物学:ジュラ紀の海生爬虫類に見られる皮膚の配色および脂肪層
神経科学:苦難をも乗り越える強迫的欲求
構造生物学:天然状態の水晶体中にあるギャップ結合チャネルの構造
天文学:惑星状星雲中で生成される希少同位体
核物理学:アクチノイドの質量非対称な分裂の謎
物性物理学:ひねりの効いたカシミール効果
神経科学:ショウジョウバエのCO2への誘引は行動状態に応じて変化する
幹細胞:血液の起源
医学研究:心臓の異種移植に成功
免疫学:ノンコーディングRNAの翻訳が免疫応答に重要な役割を果たす
生物工学:改変された直交性「ステープル型」リボソームが示す新たな機能性