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Cover Story:2種類はトラブルのもと:野生の花粉媒介昆虫を脅かすミツバチの新興感染病

Nature 506, 7488

餌を集めるマルハナバチのワーカー。多くの昆虫が頻繁に訪れる花は感染症伝播のホットスポットになっている。
餌を集めるマルハナバチのワーカー。多くの昆虫が頻繁に訪れる花は感染症伝播のホットスポットになっている。 | 拡大する

Credit: Matthias A. Fürst

表紙は、ヒマワリの蜜を集めているマルハナバチとミツバチ。効率的な授粉は、作物生産にも生態系の持続可能性にとっても非常に重要である。だが、新興感染症が一部の重要な花粉媒介昆虫集団の減少の一因になっていることを示唆する証拠が得られている。今回、実験室での感染実験と野外研究とを組み合わせて、ミツバチ(Apis mellifera)に感染する2種類の重要な病原体が、野生の花粉媒介者であるマルハナバチ(Bombus terrestris)にも感染し得ることが確認された。英国全土からのデータにより、チヂレバネウイルス(DWV)と寄生性のノゼマ微胞子虫のNosema ceranaeはそれぞれ、生息地が重複した場合のこれら2種類の花粉媒介昆虫に共通して見られ、ミツバチの病気がマルハナバチにも感染することが分かった。この結果は、野生の花粉媒介者集団が危険に曝されている可能性を示している。野生の花粉媒介者集団は、飼育下にあるミツバチ集団とは違って養蜂家による介入によって保護されることがない。もしも、このような野生の花粉媒介者がいなくなれば、作物の授粉効率が著しく低下することになるだろう。

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