Nature ハイライト

生体力学:安定性と不安定性を兼ね備えた鳥類飛行

Nature 603, 7902

アメリカヤマセミが急降下する際の姿勢のレンダリング画像。慣性特性の推定に用いた、翼の構成要素の一部が簡略化して示されている。市松模様の丸は重心、黒い四角は中性点。
アメリカヤマセミが急降下する際の姿勢のレンダリング画像。慣性特性の推定に用いた、翼の構成要素の一部が簡略化して示されている。市松模様の丸は重心、黒い四角は中性点。 | 拡大する

Credit: Jasmin C.M. Wong

最新鋭の戦闘機は、その機動性が不安定性の関数であるため、操縦できるのは反応速度が極めて優れた精鋭パイロットだけである。鳥類では、不安定な種ほど敏捷性に優れていることから、進化の過程で不安定性を増す方向に選択が働いてきたと広く考えられている。しかし、鳥類は飛行中に翼を変形させることができ、さらに、機動性は飛行中の鳥の重心および慣性モーメントに敏感に依存するため、それを実際に確認して理論化するのはこれまで困難だった。今回C Harveyたちは、鳥類22種の慣性特性を肘および手根の屈曲および伸展の全範囲にわたって調べ、鳥類は翼の変形によってロールおよびヨーの慣性を著しく変化させられるが、それによる重心の位置への影響は最小限であることを明らかにしている。また、こうした知見をすでに確立された鳥類系統樹にマッピングすることで、機動性の獲得に向けた単調な選択の不在が見いだされた。重要なのは、鳥類では安定と不安定を両立させるように選択が働いてきたということであり、そうした両立は時として同じ個体でも見られる。

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