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生体力学:鳥類は翼の変形を通して安定状態と不安定状態の間を移行できる

Nature 603, 7902 doi: 10.1038/s41586-022-04477-8

鳥類は翼の形状を変化させて並外れた機動性を実現しているが、そうした機動性は鳥類特有の一連の運動方程式によって支配される。これらの方程式を解くには、鳥類個体の空気力学的および慣性的な特性に関する情報が必要である。鳥類の飛行に関する従来の研究では、空気力学的特徴の解析に重点が置かれており、重心や慣性モーメントなどの慣性特性はほとんど取り扱われてこなかった。今回我々は、解析手法を用い、鳥類22種の慣性特性を肘および手根の屈曲および伸展の全範囲にわたって調べた。その結果、鳥類は翼の変形によってロールおよびヨーの慣性を著しく変化させることができるが、それによる重心の位置への影響は最小限であることが見いだされた。我々は、慣性特性を加えることで、ピッチの敏捷性の新たな尺度を導出してピッチの静的安定性を推定し、これによって、体重の増加に伴い敏捷性と静的マージンの範囲が共に縮小することが明らかになった。これらの結果は、進化が安定飛行と不安定飛行の両方を選択するという量的証拠を示しており、これは、鳥類が安定性から遠ざかる方向に進化しているとする一般的な説明とは対照的である。鳥類の慣性特性に関する今回の包括的解析は、鳥類の機動性の理論モデルを確立するのに必要となる重要な特徴を提示している。

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