Nature ハイライト

植物科学:NLRを介した植物免疫にはパターン認識受容体が必要である

Nature 592, 7852

植物の免疫系は、自然生態系における植物の生存と、農地での生産性の基礎である。植物には、パターン誘導免疫(PTI)とエフェクター誘導免疫(ETI)と呼ばれる2種類の自然免疫系が存在すると一般的に考えられており、これは十分な証拠により裏付けられている。PTIは、細胞表面に局在するパターン認識受容体(PRR)を介して、微生物の持つパターンによって誘導される。一方ETIは、主に細胞内に局在するヌクレオチド結合ロイシンリッチリピート受容体(NLR)と呼ばれる受容体を介して、病原体のエフェクタータンパク質によって活性化される。PTIとETIは異なる活性化機構によって開始され、関与する初期のシグナル伝達カスケードも異なっている。今回我々は、シロイヌナズナ(Arabidopsis)のPRRとPRR補助受容体の変異体(fls2 efr cerk1bak1 bkk1 cerk1三重変異体)では、非親和性細菌Pseudomonas syringaeを感染させた場合でも、ET1応答が著しく減弱することを示す。また、NADPHオキシダーゼであるRBOHDによる活性酸素種の産生が、PRRを介した免疫とNLRを介した免疫とをつなぐ重要な初期シグナル伝達事象であること、また、受容体様細胞質キナーゼBIK1が、ETIにおけるRBOHDの完全な活性化、遺伝子発現、細菌耐性に必須であることも明らかになった。さらに、NLRシグナル伝達は、PTIの主要な構成要素の転写産物やタンパク質のレベルを急激に増加させることが分かった。これらの知見は、細菌感染の際のETIにはPTIの増強が不可欠な要素であるとする修正モデルを支持している。この修正モデルは、植物の2つの主要な免疫シグナル伝達カスケードを概念的に統合し、PTIとETIの間で以前から観察されてきた下流の防御作用の類似性の機構の一部を説明するものである。

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