核にコードされたGCAT遺伝子とSHMT2遺伝子のエピジェネティックな制御がヒトの加齢にともなうミトコンドリア呼吸欠損を引き起こす
Epigenetic regulation of the nuclear-coded GCAT and SHMT2 genes confers human age-associated mitochondrial respiration defects
2015年5月22日 Scientific Reports 5 : 10434 doi: 10.1038/srep10434
高齢者で見られるミトコンドリア呼吸欠損の原因は、加齢にともなって蓄積するミトコンドリアDNA(mtDNA)の体細胞突然変異であると提唱されている。我々は、複数の高齢者から提供されたヒト繊維芽細胞株から、人工多能性幹細胞(iPSC)を作製することで再プログラム化を行い、別の可能性、つまりこれらの老化表現型が突然変異ではなく、エピジェネティック制御により調節される可能性について検証した。本研究では、高齢者由来の繊維芽細胞の再プログラム化によって、加齢によるミトコンドリア呼吸欠損が回復することを示す。この結果は、これらの老化表現型の発現が可逆的であり、核ゲノムやミトコンドリアゲノムの突然変異ではなくエピジェネティックな調節により制御されるという点で分化表現型の発現調節と同様の仕組みであることを示唆している。マイクロアレイスクリーニングからは、ミトコンドリアでのグリシン産生に関わる核コードのGCAT遺伝子のエピジェネティックな下方制御が、これらの老化表現型の原因の一部を担っていることが明らかとなった。そこで高齢者由来の繊維芽細胞をグリシンで処理したところ、これらの老化表現型の発現は効果的に阻害された。
Osamu Hashizume, Sakiko Ohnishi, Takayuki Mito, Akinori Shimizu, Kaori Iashikawa, Kazuto Nakada, Manabu Soda, Hiroyuki Mano, Sumie Togayachi, Hiroyuki Miyoshi, Keisuke Okita &
Jun-Ichi Hayashi