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がんの創薬標的探索の原動力としての合成致死性

Nature Reviews Drug Discovery 19, 1 doi: 10.1038/s41573-019-0046-z

がんの遺伝子標的治療法の第一波は、特定のタイプのがんにおいて変異が頻発する遺伝子産物を標的とする薬剤を用いることに着目していた。しかし、腫瘍の変異解析は、従来の手法で創薬に結び付く新規のがん治療標的を特定する方法として、ほとんど利用され尽くされている。さらに、既知のがんの遺伝的ドライバーの中には、その分子構造(アンドラッガブルながん遺伝子)や機能喪失を引き起こすこと(腫瘍抑制遺伝子)のために直接標的とされていないものもある。合成致死性という遺伝学的概念に基づいた機能的ゲノムスクリーニングは、これらの領域全てで薬剤標的を発見する手段となっている。合成致死性は新しい着想ではないが、CRISPR法による遺伝子編集などの最近の進歩により、系統的なスクリーニングを行って、合成致死性薬剤の標的を発見することが可能になった。こうした手法には、がんの遺伝子標的の次の波の発見と究極的には大部分のがんに今も必要とされている有効な薬剤の導入を推進する広大な可能性がある。

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