Perspective

5次元フレームワークがアストラゼネカ社の研究開発生産性に与えた影響

Nature Reviews Drug Discovery 17, 3 doi: 10.1038/nrd.2017.244

アストラゼネカ社は、2005〜2010年の研究開発生産性が業界平均を下回り、その底上げを目指して2011年に研究開発(R & D)戦略の大幅な修正を断行した。修正後の戦略では、5つの技術的決定因子(適切な標的、適切な体内組織、適切な安全性、適切な患者、適切な商業的可能性)に焦点を合わせた意思決定を行うことが基礎になっている。本論文では、アストラゼネカ社の経験がR & D生産性の問題に取り組む他社のために役立つことを期待しつつ、この「5Rフレームワーク」を用いて得られた改善成果について説明する。特に重点的に説明するのが、指定治療薬候補の質の向上に役立った創薬標的分子の検証、ヒット化合物とリード化合物の最適化、薬物動態/薬力学的モデリング、薬物安全性試験のそれぞれに対するアストラゼネカ社の取り組み方の発展、そして、より厳密で定量的な意思決定によって「真理の探究」が奨励される適切な企業風土の醸成である。また、アストラゼネカ社の取り組み方の失敗例とその教訓についても説明する。全体的に5Rフレームワークの継続的発展と適用の成果が現れ始めており、治療薬候補指定から第III相臨床試験まで完了する成功率が4%(2005〜2010年)から19%(2012〜2016年)に上昇した。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度