Research Highlights

分子エレクトロニクス:長ければ長いほどコンダクタンスが大きくなるワイヤー

Nature Nanotechnology 2018, 718 doi: 10.1038/s41565-018-0211-2

古典的な金属ケーブルのコンダクタンスは、長さに反比例する。対称的に、分子ワイヤーはトンネル障壁として働き、コンダクタンスが長さとともに指数関数的に低下することが多い。今回Algethamiたちは、ある場合には、分子ワイヤーの長さとともにコンダクタンスが実際に大きくなり得ることを示している。

密度汎関数理論に基づくシミュレーションを用いて、結合ポルフィリンオリゴマーを通る電子輸送が調べられた。電子の透過性に優れていることが知られているこの分子が、グラフェン電極か金電極のどちらかに固定されている。著者たちは、フェルミ準位配置の関数としてさまざまなオリゴマーのコンダクタンスを比較した。金電極を用いた場合、分子と電極の接続に用いた固定基に応じて、長さとともにコンダクタンスが大きくなることも小さくなることもあった。しかし、グラフェンの場合は、分子と電極のボンディングとは無関係に、長さとともにコンダクタンスが大きくなった。Algethamiたちは、この結果は、ポルフィリンユニット間の強い結合によって最高被占軌道と最低空軌道のギャップが大きく縮小されたためであると考えている。この輸送ギャップの縮小によって、少なくとも6結合ポルフィリンユニットまでは、長さに伴うトンネルコンダクタンスの低下が過剰に補償されるのである。

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