Research Highlights

走査型トンネル顕微鏡法:軌道秩序化のマッピング

Nature Nanotechnology 2017, 1117 doi: 10.1038/nnano.2017.227

電子自由度が関与する対称性が破れた状態は、物性物理学において幅広く研究されている。特に、スピンや電荷が関与する長距離秩序相は、日常的に直接検出されており、実空間で可視化できる。しかし、軌道自由度はより捉えにくく、軌道秩序化の実験的検出は、一般的にその間接的な痕跡に依存している。

今回、Kimたちは、走査型トンネル顕微鏡を用いて、典型的なヘビーフェルミオン物質であるCeCoIn5のCo軌道を直接可視化したことを報告している。彼らは、CeIn終端とCo終端の(001)劈開表面の形態を原子分解能でマッピングし、この2つの配置の特性が異なっていることを明らかにした。特に、ティップと試料を近づける(あるいは同じことだが、トンネル電流値を増やす)と、Co終端表面でのみ、原子の形状が円形からダンベル状に徐々に変化した。

現象学的には、観察されたダンベルの方位は[100]方向と[010]方向だけであり、この事実は、Coのdxz軌道かdyz軌道を電子が占有している証拠であると解釈された。意外なことに、占有されたCoのdxz軌道とdyz軌道は最隣接格子点で交互に入れ替わっており、その結果[100]方向と[010]方向の両方に沿って反強的軌道秩序パターンが生じている。著者たちは、この状態の起源と表面固有の性質、特に静電遮蔽の低下に起因するクーロン反発エネルギーの増大を関連付けている。

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