Research Highlights

コンピューティング:DNAを用いたデータ記憶

Nature Nanotechnology 2016, 916 doi: 10.1038/nnano.2016.173

DNAナノテクノロジーの急速な進展は、DNAのデータ密度が高く寿命が長いことと併せて、DNAコンピューティングが間もなく概念実証技術を超えるものとなる可能性を示唆している。

ケンブリッジ大学(英国)のS Balasubramanianたちは今回、エピジェネティック情報の生体調節(遺伝子発現の遺伝的変化)に着想を得て、単一のDNA鋳型が多層のバイナリーデータを記憶できることを示している。亜硫酸水素塩によって触媒されるシトシン(C)からウラシル(U)への変換が、2層バイナリーエンコーディングシステムの基盤となる。0をエンコードするCの位置が1に変わり、1をエンコードするGの位置が0に変わるのである。アデニンとチミンの位置は影響を受けないので、化学処理の前後で異なる情報が設計されたDNA配列から読み出される。これは、エドガー・アラン・ポーの「大鴉」の最初の2節をDNA配列に同時に記憶させることによって実証された。

3層エンコーディングシステムも、KRuO4による酸化と亜硫酸水素塩処理を行うとUに変わる5-ヒドロキシメチルシトシン残基を導入することによって実現された。これによって、ロザリンド・フランクリン、チャールズ・ダーウィン、アラン・チューリングの画像を、DNAの一片に同時にエンコードすることができた。さらに、化学的還元を用いて、可逆的に3つの画像全てを見せることができた。

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