Research Highlights

ナノスイマー:速度優先設計

Nature Nanotechnology 2015, 715 doi: 10.1038/nnano.2015.153

人工のマイクロスイマーやナノスイマーの大半は、天然の鞭毛を真似て設計されており、キラルならせん状構造物が球状の頭部に付いている。このらせん状構造物は、作動機構を通して一方向に回転でき、溶液中で系を進ませる。イスラエル工科大学、シュツットガルト大学、マックス・プランク知的システム研究所(いずれもドイツ)のP FischerとA Leshanskyたちは今回、ナノスイマーが最高速度を出すのに最適な形状を解明した。

一般的な直感に反して、長いキラルな尾は速く泳ぐのに必要ではない。実際には、考慮すべき相反する2つの力が働いている。一方では、尾が長くなると、粘性抵抗、つまり系が動く際に周囲の水から受ける抵抗が増大する。その一方で、短いらせん状の尾には、直線運動を生じさせるトルクがほとんどないのである。従って、最適形状はこの中間のどこかにある。Leshanskyたちは、回転する磁場などの外部刺激によって作動する場合、最速のナノスイマーの尾は、らせんが1回転する程度の長さしかなく、頭部の半径に対する長さの比が約5であることを算出し、実験的に検証した。

Leshanskyたちは、これは、細菌の鞭毛に見られるのとは異なる状況であると説明している。細菌の鞭毛は、通常もっと長いのである。細菌の鞭毛が長いのは、化学エネルギーを変換する内部機構によって作動し、速度ではなく推進力が最大になるように最適化されているからである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度