Research Highlights

Nナノ粒子触媒:グラフェンで守る

Nature Nanotechnology 2015, 715 doi: 10.1038/nnano.2015.152

プロトン交換膜燃料電池は、エネルギー密度の高い携帯電源として利用できる可能性がある。しかし、こうした燃料電池は白金などの高価な貴金属でできた触媒に依存しているため、広範な商業化は制限されている。このため、より安価な触媒材料が幅広く探索されるようになったが、白金系触媒の長期的な効率を改善しようとする代替的アプローチもある。韓国エネルギー研究所、オックスフォード大学(米国)、韓国科学技術院のH KimとA Robertsonたちは今回、白金ナノ粒子触媒をグラフェンの多孔質層で被覆して、寿命を延長できることを示している。

KimとRobertsonたちは、炭素前駆体と白金前駆体を400℃~1,100℃の温度で同時に蒸発させる一段階法で、グラフェンに包まれたナノ粒子を合成し、得られた構造体の特徴を収差補正透過電子顕微鏡で調べた。こうした温度では、白金表面でグラフェンの触媒成長が起こり、温度を約400℃に制限することによって、厚さが1~2層しかないグラフェンシェルを持つナノ粒子を形成できた。

このシェルによって、燃料電池の作動条件からナノ粒子が保護されるが、同時に触媒性能が低下することが分かった。しかし、合成時に窒素前駆体を加えると、グラフェンシェルが完全に成長するのを抑えることができ、合成された白金ナノ粒子は、多孔質のグラフェンシェルを持ち、高い性能と耐性の増大がともに得られることも分かった。

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