Research Highlights

量子デバイス:雑音をエネルギーに変える

Nature Nanotechnology 2015, 515 doi: 10.1038/nnano.2015.103

電気的雑音は、電子デバイスではその動作の障害となることがあるため、望ましくない存在である。ヴュルツブルク大学とセントアンドリュース大学のF Hartmannたちは今回、電圧変動の形で雑音を利用して、量子デバイスに直流を生じさせる方法を見いだした。リソグラフィーによって、AlGaAs/GaAsヘテロ構造体に間隔を150 nm開けて半導体量子ドットが2つ作られた。その1つは、雑音源によって電圧変動が生じる電子リザーバーに接続されていて、電圧変動の大きさは、電圧で制御できる。第二の量子ドットは、第一の量子ドットと容量的に結合していて、2本のリード線が接続され、右と左のリード線から流れる出る電子流が等しくならないようになっている。

第一の量子ドットに生じるランダムな電圧変動が、クーロン相互作用を介して、第二の量子ドットの電子にエネルギーを供給する。第二の量子ドットの右の接点と左の接点が非対称であるため、第二の量子ドットを通る直流が測定された。この直流の大きさと方向は雑音振幅に依存し、ゲートによって制御できる。得られた最大電流は10 nAで、電力は最大で24 pWであった。Hartmannたちは、今のところ測定は全て4.2 Kで行われているが、このデバイス概念を用いてナノスケールでエネルギーを収集できる可能性があると示唆している。

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