Research Highlights

熱管理:ナノワイヤーで暖かく保つ

Nature Nanotechnology 2015, 115 doi: 10.1038/nnano.2014.329

建物を暖めるために世界中のエネルギーの約半分が消費されており、世界のエネルギー危機の大きな要因となっている。屋内の暖房を減らすための取り組みのほとんどでは、人々からの熱損失を管理するのではなく、より優れた断熱を建物に施すことに重点が置かれている。スタンフォード大学のY Cuiたちは今回、銀ナノワイヤーをコートした布は、それを着ると、体熱の損失を減らしたり、体温を上げたりできることを示している。

Cuiたちが、銀ナノワイヤーを分散させた溶液に1枚の綿織物を漬けると、この布に多孔性で電気を通すナノワイヤーのネットワークが形成された。シミュレーションと実験によって、ナノワイヤーの間隔が約300 nmであるために、銀ナノワイヤーをコートした布は人体からの放射(波長約9 μmで最大になる)のほとんどを効果的に反射し、その結果熱のほとんどを皮膚の近くに閉じ込め得ることが示された。その上、このナノワイヤーの間隔では、発汗による水蒸気が容易に逃れられるので、この布の着心地は良くなる。追加実験によって、銀ナノワイヤーをコーティングすると、コーティングしていない布より21%高い断熱性が得られることが示された。さらに、電圧をかけると、銀ナノワイヤーをコートした布は、ジュール加熱によって能動的に温かくなることもできた。

Cuiたちは、銀ナノワイヤーをコートした布を着れば、1人あたり約355ワット節約できると見積もっている。これは、私たちの家を暖めるのに必要な電力を減らす、有望な方法となる可能性があることを示唆している。

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