Research Highlights

カーボンナノチューブ:シードから育てる

Nature Nanotechnology 2014, 914 doi: 10.1038/nnano.2014.202

単層カーボンナノチューブの特性は、その精密な構造に依存しているため、こうした材料が対象としている用途の多くで、特定のタイプのカーボンナノチューブのみのサンプルが必要である。しかし、カーボンナノチューブを成長させるさまざまな手法では、一般的に複数のタイプの混合物が作られる。スイス連邦材料科学研究所、マックス・プランク固体研究所(ドイツ)、ベルン大学(スイス)のK AmsharovとR Faselたちは今回、白金表面の「シード」分子を用いて、ボトムアップで特定のカーボンナノチューブを成長させうることを示している。

カーボンナノチューブの構造は、2つの整数(n,m)で表される。これは、カイラル指数と呼ばれ、炭素原子の六方晶シートを丸めて特定のカーボンナノチューブを作る際の、丸める方向を示している。Faselたちは、多段階有機合成を用いて作った多環式芳香族炭化水素分子C96H54を出発点として、(6,6)カーボンナノチューブを作製した。この前駆体分子は、白金表面に吸着され、表面での触媒脱水素環化反応によって、片側にキャップのついた非常に短いナノチューブシードに変換された。次に、表面での炭素原料ガスの触媒分解によって炭素原子が構造体の底に組み込まれていくことで、このシードからカーボンナノチューブが成長したその結果得られたカーボンナノチューブは欠陥が無く、長さは最大で数百ナノメートルになった。

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