Research Highlights

薬物送達:皮膚に優しい処方

Nature Nanotechnology 2014, 314 doi: 10.1038/nnano.2014.50

実験研究結果を実世界の応用に向けることは、かなり困難な課題である。ナノ粒子を用いた薬物送達では、毒性を最小限に抑えたナノ治療法のロバストな処方の開発が、この目標への重要な一歩である。カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国)と清華大学(中国)のW Gaoたちは今回、ナノ粒子で安定化したリポソームをヒドロゲルに組み込むことによって、抗菌剤の局所送達用のロバストで毒性のない処方を作成できることを示している。

金ナノ粒子で装飾すると、生体適合性リポソームが安定化され、細菌標的に到達する前のリポソーム融合が妨げられる。しかし、十分な量のリポソーム表面がまだ露出しているため、細菌毒素が表面に到達でき、リポソームからの薬剤放出の引き金となる。ヒドロゲルに組み込むと、ナノ粒子によって安定化されたリポソームの構造的完全性が維持され、ヒドロゲル架橋剤の濃度を変えることでリポソームの制御放出も可能になる。Gaoたちは、モデルとして黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)を用いて、いったんヒドロゲルから放出されると、リポソームはpHに依存する形で細菌細胞膜に融合することができ、酸性度がより高い環境で融合活性が増大することを示した。

Gaoたちは、今回のヒドロゲル処方をマウスの皮膚で試し、毒性も副作用もなく、7日間塗布した後も対照群と同様に良好な健康状態を示すことが認められた。

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