Research Highlights

グラフェン:熱電圧マップのホットスポット

Nature Nanotechnology 2013, 713 doi: 10.1038/nnano.2013.138

温度勾配を固体材料に加えると、電圧が発生する。これが熱電デバイスの基本原理であり、熱電デバイスは、廃熱を電気に変換したり、逆の原理で固体冷却器になったりできる。熱による電圧の発生は、ティップと試料の温度が異なると、走査型トンネル顕微鏡でも起こる。オークリッジ国立研究所とカーネギー・メロン大学(いずれも米国)のJ Parkたちは今回、この効果を用いて、シリコンカーバイド上に成長させた単層グラフェンと二層グラフェンの混合ドメインを含む試料を調べている。

Parkたちは、標準的なトポグラフィー画像とは異なる熱電圧マップを得て、熱電圧が局所的な電荷密度に極めて敏感であることを明らかにした。熱電圧は、二層ドメインでは周期振動を示すが、単層ドメインではほとんど示さなかった。これは、二層グラフェンでは起こるが単層グラフェンでは起こらないバレー間電子散乱に起因すると思われる。さらに、試料は、トポグラフィー画像にはないドメインパターンを示した。Parkたちは、こうしたパターンは、成長後の冷却中に熱膨張によって作られるしわの形成と崩壊に起因すると示唆している。しわが壊れると、基板との化学結合が不可逆的に変化し、それが電荷密度に反映されて、熱電圧によって捉えられるのである。

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