Research Highlights

金属ジカルコゲニド:単層二硫化モリブデンのエレクトロルミネセンス

Nature Nanotechnology 2013, 513 doi: 10.1038/nnano.2013.89

バルクの二硫化モリブデン(MoS2)は間接遷移型半導体であるが、単層のMoS2は直接遷移型半導体になる。この単層MoS2を用いてトランジスタを作ることができ、フォトルミネセンスを放射しうることが、これまでに示されている。IBM TJ ワトソン研究センター(米国)、ケンブリッジ大学(英国)、カールスルーエ工科大学、ダルムシュタット工科大学(いずれもドイツ)のP AvourisとM Steinerたちは今回、電界効果トランジスタに埋め込んだ単層MoS2からのエレクトロルミネセンス(電圧の印加に応答して放射される光)を検出した。

一般にエレクトロルミネセンスは、異なる電極から注入された負の電子と正のホールが再結合して光子を放出するとき観測される。しかし、今回の最新の実験では、電子のみが電極から注入されており、別の機構によってエレクトロルミネセンスが生じたことが示唆される。特に、AvourisとSteinerたちは、MoS2層に注入された高エネルギー電子が散乱されて、電子-ホール対が生成されると考えている。この現象は、カーボンナノチューブのような他のナノ構造体で、以前に観測されている。

しきい値電圧を超えると、つまり高エネルギー電子が注入されたときにのみ、エレクトロルミネセンスの強度が急激に増大することが観測され、この機構が裏付けられた。さらに、電界効果トランジスタの金属接点の1つに近い領域から、光の大部分が放射されている。これは、高エネルギー電子の散乱の結果として電子-ホール対が生成されたことを示すもう1つの特徴である。

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