Research Highlights

スピンカロリトロニクス:スピンゼーベック効果の真価を問う

Nature Nanotechnology 2013, 1213 doi: 10.1038/nnano.2013.279

スピンゼーベック効果では、強磁性体と非磁性体の二重層に温度勾配を与えると、スピン流つまり正味の電荷輸送を伴わない角運動量の流れが生じる。このスピン流は、非磁性層における逆スピンホール効果によって検出できる。スピンゼーベック効果は、熱流によってスピン流を制御できる可能性があるため、注目されている。しかし、測定されるスピンゼーベックシグナルは、他の効果つまり異常ネルンスト効果や異方性磁気抵抗による影響を受ける可能性があるため、スピンゼーベック効果の起源と大きさについては議論が続いている。今回、2つの異なる研究チームがこの問題に取り組み、イットリウム鉄ガーネット/Pt薄膜二重層とさまざまな基板上に成長させたパーマロイ薄膜の測定結果を報告している。

この2チームは、それぞれ縦型と横型の測定配置を用いている。縦型配置では、スピンゼーベック効果によってスピン流が温度勾配に対して平行に生成され、横型配置では、垂直に生成される。ヴァルター・マイスナー研究所(ドイツ)などのS Gönnenweinたちは、縦型配置を用いて、20個以上の一連のイットリウム鉄ガーネット/Pt試料におけるスピンポンピング、スピンゼーベック効果、スピンホール磁気抵抗を測定し、こうした効果を同じスピン依存パラメーターのセットを用いてモデル化し、スピン起源であることを実証した。その一方で、レーゲンスブルク大学とビーレフェルド大学(いずれもドイツ)のC Backたちは、横型配置を用いて、スピンゼーベック効果に対するさまざまな基板の影響を調べ、どの基板を用いても、スピンゼーベック効果の寄与は異常ネルンスト効果や異方性磁気抵抗の寄与と比べて無視できる程度であることを見いだした。これは、これまでの結果とは著しく異なっている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度