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新しい抗うつ薬の強力な標的

Nature Medicine 9, 9 doi: 10.1038/nn1749

Nature Neuroscience誌9月号に掲載される研究によると、TREK1とよばれるカリウムチャネルは、抗うつ薬の新しい標的となる可能性がある。通常よく用いる抗うつ薬の標的は、神経伝達物質セロトニン量の上昇によりはたらくと考えられているが、TREK1チャネルは、脳のこれとは異なるシグナル伝達経路を通じて作用するのかもしれない。  Michel Lazdunskiと共同研究者らはTREK1チャネルの遺伝子を欠損しているマウスで研究した。このチャネルは通常、神経細胞の静止膜電位を設定する背景電流にかかわっている。うつ病のモデルに使われるいろいろな行動テストでは、対象マウスは抗うつ薬処置を受けたかのように行動した。それに加えて、セロトニン作動性の活性増加も示し、おだやかなストレスに応答するストレスホルモンのコルチコステロンの分泌量が健常マウスが示すよりも多くなかった。さらに、Lazdunskiらは、TREK1チャネルは通常の抗うつ薬により直接阻害されることも報告している。  TREK1の遺伝子を欠損するマウスが抗うつ薬の投与を受けたように振る舞うという今回の発見は、カリウムチャネルの“遮断薬”となる低分子物質が治療に効果がある可能性を示唆している。TREK1がセロトニンによらない経路を通じて抗うつ効果を示すことが明確になれば、将来のTREK1チャネルをねらった治療が通常の抗うつ薬よりも速効性で副作用が少ない可能性が考えられる。

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