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心房細動:心房細動におけるKCa2カリウムチャネルの阻害 ─ 無作為化第2相試験

Nature Medicine 30, 1 doi: 10.1038/s41591-023-02679-9

心房細動(AF)を治療する既存の抗不整脈薬は、効果が不十分で、禁忌や、催不整脈作用などの有害作用がある。KCa2チャネルの阻害剤であるAP30663は、動物においてAFに対する有効性が示されたが、AF患者における効果は明らかではない。本論文において我々は、現在の症状としてAFの持続が7日以内である患者を、静脈注射によるAP30663の3 mg kg−1投与群、5 mg kg−1投与群、あるいはプラセボ投与群に無作為に割り付け、第2相試験を行った結果を報告する。本試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)中に登録が停滞したため、時期を早めた形で中止となった。本試験の主要評価項目は、投与開始から90分以内のAFから洞調律へのカルディオバージョンであり、ベイズ統計学によって解析された。無作為に割り付けられた患者のうち59人が有効性解析に含まれており、このうち主要評価項目を達成したのは、AP30663 3 mg kg−1投与群で42%(12人中5人)、AP30663 5 mg kg−1投与群で55%(22人中12人)、プラセボ投与群で0%(25人中0人)であった。両投与群ともプラセボ投与群に対する優越性は99.9%以上の確率で示され、事前に指定された95%の閾値を上回った。副次評価項目の1つであるカルディオバージョンまでの平均時間は、AP30663 3 mg kg−1投与群で47分(s.d. = 23)、AP30663 5 mg kg−1投与群で41分(s.d. = 24)であった。AP30663はQTcF間隔の一過性の延長を引き起こし、平均した効果の最大は5 mg kg−1投与群の37.7 msであった。両投与群とも、心室性不整脈は起こらず、有害事象発生率はプラセボ群と同程度であった。AP30663は、発症後間もないAF患者のAFカルディオバージョンに有効であることが明らかとなった。KCa2チャネルの阻害は、AFの調律コントロールの魅力的なメカニズムであり、無作為化試験においてさらに試験すべきである。ClinicalTrials.gov登録番号:NCT04571385。

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