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サル痘:2022年以前にヒトで共流行していたサル痘ウイルスの独特な系統

Nature Medicine 29, 9 doi: 10.1038/s41591-023-02456-8

2022年に起きたサル痘の世界的な集団発生は、この人獣共通感染症がヒトからヒトへの効果的な伝播を確立した仕組みと、さらなる適応の可能性について疑問を提起する。2022年の集団発生を起こしたウイルスは、2017年にナイジェリアで初めて報告された現在進行中の集団発生と関連しているが、この2つを結ぶ進化的な経路は、ナイジェリアからのウイルスの移動が最初に記録された2018年と、サル痘の世界的な集団発生が始まった2022年の間のゲノムデータがないため、明らかになっていない。本論文では、2019~2020年にナイジェリア南部地域の患者から得られた18のウイルスゲノムから、2022年以前の数年間にヒトで共流行した複数のサル痘ウイルス(MPXV)系統を明らかし、時間経過とともにAPOBEC3の活性に関わる変異が次第に蓄積していたことを示す。我々はナイジェリアのA.2系統単離株を特定し、この株は、ナイジェリアで始まった2022年の集団発生とは独立に、北米への移動が複数回あったことを確認し、またこの株は、最後の移動時期から数えて2年以上も前から、ナイジェリアでヒト間伝播によって存続していたことを確認した。最後に我々は、全てのA.2単離株にA46R遺伝子を破壊するAPOBEC3型変異が見られることを確認し、この変異はウイルスに対する自然免疫を調節し、この系統を特徴付ける変異であることを示す。まとめると、我々のMPXVに関するデータは、ポックスウイルスの確立された適応機構と一致すると考えられる変異をはじめとして、MPXVにはヒト集団内で持続的に多様化する能力があることを実証している。

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